BESSA R で試してみたかったレンズが、P. Angenieux 35mm f2.5 (Type R1) (Lマウント改)だ。
このレンズ、ポジフィルムで撮る分には気にならなかったのだが、ネガやモノクロで撮ると、どうもヌケの悪さが目立つ。
いわゆるアンジェニューの淡い写り、とは違う、コンディションの悪さに起因するモヤモヤした感じ。これがどうも気に入らない。
そこで、ズミクロン40mm の修理で山崎光学に行ったときに、一緒にアンジェニューも見てもらった。
すると、「ピントはいいけど、中玉のクモリとキズが原因だろう」 とのことだった。
レンズ清掃とほんの少し研磨すれば、オリジナルに近い写りを楽しめますよ、とのことだったので思い切ってお願いした。玉に手を入れることには躊躇したが……。
上がってきたレンズは、玉がスコーンと抜けていて、少し青いコーティングとあいまって美しい。
けどその反面、「きれいすぎる……」、「元の写りと変わってしまったのでは……」、という不安がよぎる(まぁ完全なオリジナルの写りは知らないわけですが)。
というわけで、露出、シャッタスピードが安定しているであろうBESSA R で試し撮りを行うことにした。
BESSA R P. Angenieux 35mm f2.5 (Type R1) Kodak T-MAX400
開放付近で撮ってみたところ、甘すぎず、そしてシャドーがつぶれずに中間調がなかなか出ているようだ。
BESSA R P. Angenieux 35mm f2.5 (Type R1) Kodak T-MAX400
BESSA R P. Angenieux 35mm f2.5 (Type R1) Kodak T-MAX400
この日は曇り空だったが、屋外だと結構絞る必要がある。
しかしBESSA R は1/2000 まであるので、f4~f5.6 で撮影。
少し絞ると解像度は増すが、かといってカリカリとコントラストがあがりすぎるわけでもないので、これはなかなかよさそうだ。
BESSA R P. Angenieux 35mm f2.5 (Type R1) Kodak T-MAX400
ここは、確かf8 くらいまで絞ったが、このくらいまで絞ると、逆に線が細い描写になるのは、以前と同様だ。
BESSA R P. Angenieux 35mm f2.5 (Type R1) Kodak T-MAX400
BESSA R P. Angenieux 35mm f2.5 (Type R1) Kodak T-MAX400
日が出てきたので、逆光を試してみる。
以前はこういったシチュエーションだと全体的に白っぽくなってしまったが、ほどほどのフレア、ハロで好ましい。
BESSA R P. Angenieux 35mm f2.5 (Type R1) Kodak T-MAX400
BESSA R P. Angenieux 35mm f2.5 (Type R1) Kodak T-MAX400
ここもf8 くらいだったが、硬くなりすぎず、ほどよい緩さと湿度を感じさせる。
BESSA R P. Angenieux 35mm f2.5 (Type R1) Kodak T-MAX400
BESSA R P. Angenieux 35mm f2.5 (Type R1) Kodak T-MAX400
基本的な解像力は高く、かといってコントラストが高すぎない。思いのほか緻密な描写だ。
そして、憂いや湿度感というか、なんとも不思議な写りを見せる。
この日は曇天、曇りや雨のような天気が似合うレンズだ。
というわけで、いわゆる 「山崎磨き」 のアンジェニューを見てきたが、以前のようなヌケの悪さは改善し、かといって写りすぎる、というわけでもない。アンジェニューらしい、しっとりとした写りは維持されており一安心、いや大満足のだいきちであった。
絞っても柔らかい印象で、日中のポートレートにも向きそうですね。
階調もなだらかで美しいですし。
写真自体にどこか温かさを感じるそんな写りだと思います。
キズモノを手にしてしまっても、こうしてオリジナルに近い写りを再現していただけるのはありがたいですね。
断捨離も大事ですが、捨てる前に一考するのもまた良しですね。
そうですね。フランス製のレンズは、写真や映像に対する哲学がドイツや日本とまったく違う印象です。はっきり写ることだけが正義ではないというか。
なので、人の目の感覚に近いのかもしれません。
レンズを削る(といっても、100分の5ミリくらいですが)ことには抵抗がありましたが、結果としてはやってよかったです。
あえてキズモノを格安で買ってきて、ここで修理してもらう人もいるようです。
こんにちは。
いや、このレンズすごく面白いですね!!
オールドレンズはニッコールしか体験したことのない私としては、写真の湿度感なんて、始めてみたので感動しました。特にオーバーで撮ったものは不思議な魅力がありますね。
レンズの調整は賭けの部分もあるそうですが、さすが山崎さんですね。
どもども、だいきちボンバー殿。
アンジェニューってのは語感だけでも心地よいものがありますね。
山崎光学でOHしましたか。素晴らしいコンディションなのでしょうね。
写真を拝見するに画像では物足りないですね。これは、プリントを拝見したい。
結像力やディテールの再現というよりも鉛筆の精密画を見ているようです。
画角もちょうどいいのでは。50mmで開放に近いと普通の癖玉になってしまいそうです。
TMAX400というフィルムと実にマッチしていますね。
もっと調子の硬いトライXあたりだとどうなるか楽しそうです。
しろたん。さん、こんばんは。
このレンズは……、フランスのレンズ全般の特徴かもしれませんが、光に対して繊細で、色のバランスも日本とちょっと違う感じです。
これはフランスの風土、気候や色の見え方の違いに関係しているのではないか、と想像しています。
レンズの調整はおっしゃるように一か八かですね。オリジナルに手を加えることに抵抗のある方も多いと思いますが(僕もその一人ですが)、アンジェニューの経験は多いとのことだったのでお任せしました。結果的にはよかったです。
Rikkieさん、こんばんは。
アンジェニューは、名前がいいですよねぇ、本当に。イメージと写りも合っていて、響きだけでもよく写りそうです笑。
> 写真を拝見するに画像では物足りないですね。これは、プリントを拝見したい。
> 結像力やディテールの再現というよりも鉛筆の精密画を見ているようです。
> 画角もちょうどいいのでは。50mmで開放に近いと普通の癖玉になってしまいそうです。
そうなんですよ。僕も第一印象は細い鉛筆で丁寧に描いたような絵、でした。コントラストとか結像力といった価値観とは別世界というか、いわゆるレンズの性能テストでは推し量れない魅力があると思います。
> TMAX400というフィルムと実にマッチしていますね。
> もっと調子の硬いトライXあたりだとどうなるか楽しそうです。
これもまさにおっしゃる通りで、TMAX400とマッチしていて、最近TMAX400に対して、あんまりしっくりきていなかったのですが、このレンズを使ってTMAXを見直していたところです。
Tri-X だと、これまたどういう描き方をするか、楽しみです。また違ったおもしろさがありそうですが。
いずれにしても、印画紙に焼いてみようと思います。コメントありがとうございます。