NIKON F や F2 に似合うオールドレンズということで、NIKKOR-S.C Auto 50mm f/1.4 と Ai-s 85mm f/2 を購入したことは以前に記した(オールドレンズで遊ぶ)。
その写りの良さに味をしめ、また次なるレンズを物色していた。
条件としては、「広角系と望遠系を1本ずつ」 そして 「できるだけボディの年代と合わせる」ことだ。つまり、Ai や Ai-s は避けたい。
まず広角系だが、35mmはCarl Zeiss Distagon T* 2/35 ZF.2 、28mmは、OLYMPUS ZUIKO 28mm f/3.5 と KLASSE W (レンズが28mm)を持っているので、24mmあたりを探す。
望遠系は、85mm と 180mm を持っているので、その間の135mm を探すこととした。
「ボディとレンズの年代を合わせる」とは、完全に「精神のコスプレ」(by 田中長徳)なのだが、ボディと同じ年代のレンズの方が似合う、その時代に浸れる、という一種の妄想である。
だいきちのNIKON F は1968年製、F2 が1976年製なので、なるべく近い年代だと嬉しい。
すると、ある中古屋さんに、24mm と 135mm を発見。さっそく見に行く。
このショップは以前にも購入したことがあるが、すべて調整済なので、ヘリコイドの具合は最高だ。
見た目は古いのだけど、嫌な感じがしない。“清潔感のある古民家”みたいなレンズなのだ。
しかも、年代がボディと近い。24mm が1975年製、135mm が 1967年製だ。両方ともボディと1年違いとは!
NIKON F と NIKKOR-Q Auto 135mm f3.5 の組み合わせ。
NIKON F2 と NIKKOR 24mm f2.8 の組み合わせ。
このNIKKOR-Q Auto 135mm f3.5 は、書籍『ニコンFシリーズ』(日本カメラ刊) の中で写真家の英 伸三氏や竹内敏信氏がNIKON F との組み合わせで使用していて、すばらしい作例が掲載されていたので、いつかは使ってみたいなぁ、と思っていた1本だ。
またその本の中で、三木 淳氏が記した文章が紹介されていた。
「ある日作家(写真)の村井竜一さんがライフに遊びに来た。
彼が奇妙なレンズを持っているのでみせてもらうとそれがニッコール85ミリF2レンズであった。
私はそれを借りて「日本製ゾナーですよ」とダンカン氏をパチパチスナップした。
「おお!日本製ゾナー!日本製キャデラックはどこにある?」と
イミテーション天国の日本をヒヤかすような調子で彼は笑っていた。
撮ったフィルムを8×10に伸ばして「日本製ゾナーでもよく写りますよ」と見せたとたん彼の顔色が急に変わった。
ルーペを持ち出しながら「すごい!実にシャープだ!どこの製品だ?この会社にすぐ行こう。連絡してくれ」と矢つぎ早にいうのであった」(ニコン刊「ニコン75年史より」)
このダンカン氏の「おお!日本製ゾナー!日本製キャデラックはどこにある?」のセリフが秀逸で、「日本製ゾナー」「日本製キャデラック」という単語が頭の中をグルグル回る。
結局、ダンカン氏は85mmではなく、50mmf1.5と135mm f4 のライカ用ニッコールを買って朝鮮戦争に行ったそうだが、その135mm の流れをくむのが、NIKKOR-Q Auto 135mm f3.5 なのだ。
NIKON F NIKKOR-Q Auto 135mm f3.5 C200
NIKON F NIKKOR-Q Auto 135mm f3.5 C200
NIKON F NIKKOR-Q Auto 135mm f3.5 C200
NIKON F NIKKOR-Q Auto 135mm f3.5 C200
NIKON F NIKKOR-Q Auto 135mm f3.5 C200
NIKON F NIKKOR-Q Auto 135mm f3.5 C200
NIKON F NIKKOR-Q Auto 135mm f3.5 C200
NIKON F NIKKOR-Q Auto 135mm f3.5 C200
その場の空気感とか、望遠の圧縮効果とか、ボケ味とか…… う~、たまらん。
というか、そもそも46年、47年前のカメラとレンズがこれだけ写る、ということが単純にすごいことなのだと思う。